LEDの素子の販売や、照明器具の企画販売をする会社の本社ビルである。築25年のオフィスビルを購入し、フルリノベーションすることとなった。
全体を大樹のように捉え、下階に倉庫、アーカイブ棚など“根っこ“のように蓄積する場所。中間階に打ち合わせ室、社員の執務室があり意見交換などをしながらアイデアなどが“芽吹く“場所、上層階にはレクチャールーム兼ラウンジ、吹き抜けによって繋がる開放的な社長室があり、外に向けて大きく“葉を広げ“て発信する場所となっている。エントランスにはクライミングウォール、ラウンジ、屋上には庭園テラスを設け、働きながら気持ちを入れ替えられる社員の為の場所が用意されている。建物躯体に大きく手を加えたところは、4階と最上階(5階)の間のスラブをブリッジ部分を残して抜いた吹き抜けである。社長室からはラウンジの様子が一望でき、4階から5階テラスの緑が見え、新しい視点が生まれた。
光を扱う会社であることから働く場所の光環境を意識した。スケルトンにすると構造的にかなり整理された梁配置が現れ、各階スラブの中間には短変方向にしか梁がないところから、梁の脇にスラブを均等に光らせることのできるアンビエント照明を設置しふんわりと優しく光る天井面を作りだした。梁の脇に隠されていて、ほぼ気づかないほどささやかではあるが、点いているかいないかで空間がガラリと変わるほどに効果が高い。そしてわずか10mmの細いLEDライン照明が天井からデスク上部に吊り下がっている。エントランスの吹き抜けの本棚は全体が光り光壁のような空間となっており、来訪者の気持ちを盛り上げる。器具の存在感は極力消し、建築的に解かれた光によってそれぞれのシーンにあった光空間が作られている。
リノベーションによって作られるオフィスが増えてきた。働き方の変化に伴い、従来のオフィス空間を見直していく必要がある。執務室以外の空間の豊かさ、そしてその豊かさを生み出す素材、光、風、緑など細部の要素へのアイデアが重要だと感じている。
平河町のオフィス
Architecture
- Title
- 平河町のオフィス
- Date
- 2018.05 - 2019.12
- For
- office
- At
東京都
- Size
- 529㎡
- Status
- Completed
Staff
- Direction
- 永山祐子
花摘知祐
芳野航太 - Photo
- Nobutada Omote