群馬県の中之条町四万温泉の元禄7年に湯治宿として開業された歴史ある旅館、映画「千と千尋の神隠し」のモデルという説もある積善館の改修プロジェクトである。本館は現存する中で日本最古の木造温泉宿で群馬県の重要文化財に指定されている。幾度となる増築が繰り返され現在の形となっており、同敷地内に山の斜面に沿って3棟の宿泊施設がある。作られた年代の差もあり各々違った雰囲気をもち、価格帯も様々である。「草津の治し湯」とも言われ、美肌の湯として泉質も体に優しい効能で知られてきた。湯治文化の盛んだった時代には多くの人が滞在しながら療養していたという。
今回、現代湯治としての宿泊施設を考えた。働き方の変化の中、どこにいてもテレワークが可能になってきた現代、心と体を休ませながら仕事もできる日常とつながった湯治場として提案できると考えた。このプロジェクトの第一弾として山荘棟の客室改修を行った。客室は入ってすぐに部屋がありその奥に居間がある日本家屋の一般的な構成である。角部屋のため居間に入ると2方向に自然が広がる。障子を四連引きにかえ、大きく開け放てるようにした。この趣のある部屋に何か付け足すのではなく、要素を減らす方法でこの部屋の特徴がより引き立つようにと考えた。木障子上の小壁をガラスへ、アルミサッシは木枠のFIX窓、足元の曇りガラスは透明ガラスへと変換し、より外との繋がりを感じられる浮遊感のある空間となった。部屋の構成については、改修前は行き止まりが多く過ごし方に制限があったため、部屋内部をぐるりと巡れる回遊性のある平面計画とし、様々な場面へ適応できるような工夫をした。今では使われず飾りとなっていた書院は本来の意味である書斎として蘇らせることで現代湯治の場を作り出した。
積善館 山荘
Architecture
- Title
- 積善館 山荘
- Date
- 2018.03 - 2019.05
- For
- commercial
- At
群馬県
- Size
- 70.0㎡
- Status
- Completed
- Website
- https://www.sekizenkan.co.jp/
Staff
- Direction
- 永山祐子
井出美咲 - Build
- 株式会社町田工業
- Structural Design
- 森部康司
- Planting Design
- 和想
- MEP Design
- ピロティ
- Light / Art
- 小林正樹
- Lighting Production
- TAiGALamp
- Furniture Production
- 株式会社Basis
- 3D archive
- ARCHI HATCH
- Photo
- Nobutada Omote