敷地は都内の高台にある閑静な住宅街。純和風建築の母屋に隣接して美術コレクターの建主とその家族5人のための住宅を建てることとなった。アート作品を展示できること、そして将来的に私設の美術館に転用できるようにすることが要望であった。コレクションの多くは首都高をテーマに集められている。絵画を飾ることができ、 かつどこか首都高のような土木構造物が生み出す高架下のダイナミックさとアノニマスな自由さを感じさせたいと思った。 最初にある程度強いグリッドによる構成を決め、その中をリノベーションをしていくように住宅化していった。3層吹抜けに面して、リビング、ダイ ニング、寝室、浴室を浮かぶように配置した。 今後、美術館に転用される際にはリノベーションされ部屋の配置を変えることができる。 展示壁はトラス壁とし、住宅にはオーバースケールといえるサイズのH型鋼を短辺側に3箇所差し入れながら3層分の展示壁を積み、100mm角の無垢柱6本がそれを支える。両端はキャンチレバーとし、展示壁だけが浮いている。各階の展示壁の間のH型鋼の高さ分の隙間はぐるりとハイサイド窓を回しており、周囲に開口を大きく取りにくい条件の中で室内に最適な光と風を取り入れる場所となっている。リビングのコーナーのみ母屋の庭に向けて大きく開口を設け、高台からの眺望を得ている。最上階は屋上の腰壁をセットバックすることでトップライトを設け、 3層の吹抜けを通して1階へと光を落とす。 吹抜け空間を見上げるとダイナミックなH型鋼の梁の隙間から空が抜ける様子は、首都高の下から空を見上げる感覚と重なる。各階の展示壁にかけられたアート作品が空中に浮かんで見え、展示壁のアートとハイサイド窓からの風景が等価に見えてくる。美術館の中に住まうような日常と非日常の混ざり合う、ここにしかない体験が生まれている。
展示壁のいえ
Architecture
- Title
- 展示壁のいえ
- Date
- 2019.06 - 2022.11
- For
- residential
- At
東京都
- Size
- 168.0㎡
- Status
- Completed
Staff
- Direction
- 永山祐子
大澤さほり - Build
- 株式会社石間工務店
- Structural Design
- yAt構造設計事務所
- Lighting Plan
- 岡安泉照明計画
- Planting Design
- 荻野景観設計株式会社
- MEP Design
- Y.M.O.合同会社
- Photo
- Satoshi Takae