サラウンドに開き身体に迫りくる浮遊感あるオフィス
九段北に建つ12階建てのオフィスビルである。皇居を望む南側、九段ハウスのある西側は富士山まで眺望が開け、圧倒的な眺望に恵まれた立地であった。南側、西側、そして接道面である北側の3面を開くように東側にコアを寄せ、天空率により正方形に近い平面で縦に高さを積むことにした。上層階は特に皇居側、日本武道館への眺望も得られるので、スキップフロアとし、ワンフロアの中で眼下に広がる風景などさまざまな視点からのバリエーションある眺望を得られるようにした。一方、下階は九段ハウス側の庭を望めるように、なるべくサラウンドに開口を取るように工夫し, テラスも九段ハウス側に設けた。当初、クライアントとの間でレジデンスにするかオフィスにするかという議論があった。どちらもプランニングし、検討の結果オフィスとすることになった。コロナ禍の中、在宅ワークも増えている時期で、オフィスのあり方が大きく変わるタイミングであった。レジデンスとしても魅力的な立地だけれど自社ビルを売却する会社も出ている中で、私自身も小中規模程度のオフィスはニーズが高いのではないかとの思いがあった。コロナ以降、人が集まりたくなるオフィスとして、効率よりも空間性が求められ、ここにしかない魅力を持ったオフィスとすることが命題と考えた。丸の内に立ち並ぶような大型のオフィスビルにはこのような都市の眺望を持つビルはあるが、小さな平面で遮るものなくサラウンドに開き、身体に迫りくるような浮遊感のある体験はなかなか得難い。
テラスの手すりに合わせた1,100mmの高さの腰壁を回し、外から見るとシンプルな腰壁と開口部の積層だが、上層階ではこの腰壁の高さまで一部床を上げスキップフロアとしている。解放性をより強調するため建物の水平開口のコーナーから柱を抜いた。腰壁は大きなトラス梁となり柱梁のフレーム構造を取り巻くような構成だ。 井桁の梁に対し中央は対角の2本の柱のみとし、室内空間は独立柱を1本だけに限定した。階高をなるべく確保するために天井の梁はあえて半分現し、フランジにライン照明を置きアンビエント照明としている。細長いビルを見上げた時に見えてくるのは主に天井面, 外壁と天井がビルのファサードとも言える。井桁の梁と照明がこの
ビルの表情となって、今後各フロアのプランが変わったとしてもビルの表情を保ち続けてくれる。外壁は波型のECPで微妙な陰影を持っている。下の階から空に向けて撥水材の色を変え明度を暗から明に変化させている各階の外部とのコントラストが変化するとともに、外から見た時に上から光を浴びているような印象を与えることで、下から見上げた時の印象を和らげている。
ESCON 九段北ビル
Architecture
- Title
- ESCON 九段北ビル
- Date
- 2020.09 - 2022.11
- For
- office
- At
東京都,千代田区
- Size
- 1580.1㎡
- Status
- Completed
Staff
- Direction
- 永山祐子
雨宮脩大
近藤弘起 - Build
- 福田組
- Structural Design
- yAt構造設計事務所
- Photo
- Satoshi Takae