東京都心、接道している北東方向を除いて3 方向を高い建物に囲まれた、間口6.5m、奥行き20mという敷地に建つ住宅。ほぼ敷地一杯に北側・道路斜線に合わせた高さをもつボリュームを置き、光が入り込みやすいようにすり鉢状に凹ませる。すり鉢の底辺は中庭となる。その中庭に向かって傾く東側の真っ白な大屋根は、太陽からの光を反射し、中庭を挟んで対面する3 層に重なる各部屋に光を誘い込む。どの部屋もトップライトや開口により行き止まりのない、常にどこかにつながる場所となる。意識のなかでの空間のつながりと動線上のつながりは必ずしも一致しない。意識のなかでの距離感と、実際の距離のズレにより空間に不均質さが生まれる。例えばダイニングとリビングは中庭を挟んで分断され、視線は通るけれど中庭と壁の隙間からしか行き来できない。そして、ダイニングからリビングへ入ると、突然、頂点が6.8mあるメガホン型の空間が表れる。山を見たとき、人はそこに自分がいる場所とは違う、ある種、特別さを感じる。そこに行ったらどんなだろう、と密かに思いを馳せる。そのとき、精神は空間を自由に行き来する。均質化した空間にはない、精神的自由さをもつ空間をつくりたいと思った。この住宅には、その1つのきっかけとして白く光る“丘”がある。どの部屋からも感じられるが、誰の手にも届かないその“丘”は、意識のなかでは共有されるけれど、誰のものでもない場所だ。そこから日常生活の隣に流れるもう1つの物語が生まれる。中庭から見上げる。空に向かい傾斜する白く光った面と、その稜線の先に空が見える。丘のふもとから空を仰ぐようなこの情景は、見えない向こう側を意識させ、無限の広がりをつくり出す。