日本建築様式、特に神殿造りの庭を囲んで用途を持った場所が廊によって繋げられる構成を参考にした。各々の機能を持った場所を森の遊歩道(廊)によって繋げていくという方法をとることで“ホール”という大きな場所を細分化していった。大掛かりなホールロビーやホワイエはここにはなく、北側の接道面から森を縫ってまっすぐに続く遊歩道がそのまま外部ロビーとなり、さらに室内に入ってホールホワイエとなって森に抜けていく。その遊歩道脇にホールが配され、森の道から直接入る感覚がある。森の中にそっと置かれた森に溶け込むホールを目指した。
既存の森は土、葉、枝など小さな要素の集積でできている。建物の表面がのっぺりと抑揚のない大きな面で構成されると森との親和性がない。そこで建築の汎用材に肌理を与えることを考えた。例えばアスロックに人の手のストロークを用いた文様を付けたり、リブ型アスロックのリブピッチに合わせた縦格子に後ろから斜めの格子を重ねたオリジナル文様「森綾」のアルミ鋳物パネルを作り、シームレスな外壁でありながら内部から見ると透けた壁を作った。カフェ天井も敷地で伐採した赤松を使った「森綾」模様である。ホールホワイエ、進入路、多目的室の天井はさざ波のように外部の緑を反射する素材とし、建物と緑が一瞬溶け合うように見える。
もともとこの地域に生息する植物を花や紅葉の色彩で分別して「森のカラーパレット」を作り、森を再編集した。青い花の咲く場所、紅葉で赤くなる場所、紅葉で黄色く場所など見慣れた植物を再構成することで、ここにしかない印象的な風景を作り出している。建物自体は土の明度と彩度に近いグレーが基調で、建物に彩りを与えているのは季節によって刻々と色を変化させる「森のカラーパレット」である。