A館5階の婦人服フロアとB館同階の紳士服フロアは、感度の高い大人をターゲットとした新しい共通環境が求められた。もともとの環境は多くの百貨店の共通環境のように開放的でニュートラルな印象の空間であったが、今回は路面店舗をつくるようにあえて特徴的なコンセプトを設定。親密さを感じるよう、空間の分割、光の状態を一から考え直していった。
A館は、宮殿建築を利用した美術館のような空間をコンセプトとした。宮殿建築の多くは部屋が連続する構成で、その連続した豪奢な空間を通り抜ける特別な体験が高揚感を生み出す。今回の売り場は、ステンレスのリングメッシュでつくられた、透けた壁が連続する部屋で構成した。各々の部屋にテーマを与え、床の仕上げの色や、白く光るシャンデリアによって部屋の特徴をつくり出している。また、空間の印象を限定していた柱梁のグリッドは、リングメッシュの効果によって消すことができた。
B館は、大人の趣味雑貨を含む沢山のモノが集積する場所である。モノの集積場として魅力的な博物館をコンセプトとした。古い博物館の構成要素として、“ガラスの陳列棚/引き出し/オブジェのような什器/アーチ”などいくつかの特徴を抽出。あえて高さもバラバラの特徴ある家具で構成することで、それぞれの空間にリズムを与えた。陳列の仕方についても、博物館らしい新しい見せ方を売り場の方々と協議しながら考えていった。光環境は、暗い店内に対して光る陳列棚で強弱をつけ、親密さをつくり出している。
A、B館の連絡通路は、既存のガラス天井のオーニングを取り払い、グラデーションのミラーフィルムを貼ることで、木製パーケットの床を天井に映し、万華鏡のような空間とした。
買い物をするだけでなく、巡るだけで楽しめる空間。新しい体験や情報が得られることで、ただ物を買う空間を超え、もう一度来たいと思えるような場を目指した。