京都の商業中心地、四条通り沿いにある「ルイ・ヴィトン京都大丸店」のファサードデザインである。ルイ・ヴィトンが古いトランクに使用していた“レイエ”というストライプパターンと、京都の縦格子、この重なる2 つのイメージから縦ストライプをファサードのパターンとして採用した。アーケードによって上下に分断されてしまう今回の敷地条件のなかで、水平移動に対して有効なパターンであるということも大きな理由であった。この黒い縦格子は実際には存在しない、偏光板によってつくり出された闇である。そこに存在している空気の奥行を可視化しているに過ぎない。現前しているこの格子には、厚さがない。その黒色には、質感がない。人の動きに合わせて格子は回転したり、消えたり、次々に表情を変えていく。人が静止すると、反射のない黒い格子は静寂した空気のなかで静止する。実際には存在しない、しかし、そこに見え、表情を変えていく、厚さも質感もない黒い格子。それらは“在る”わけではなく、“ 見えている”。人の意識と実体の間に立ち現れている幻影である。“物質(モノ)としてのファサード”ではなく“事象(コト)としてのファサード”をつくりたいと思った。そこでは“在る”ものと“見えている”ものが混在し、平等に配置され、“事象(コト)としてのファサード”を構成している。このファサードと対峙した人が、そこに何かを見つけたときに初めて“事象(コト)としてのファサード”は成立する。