表参道のハナエモリビルの裏手、建築家北山恒さんの設計した新築のテナントビルの2、3 階に入る大型美容室のインテリア設計。この仕事が独立後最初の仕事だ。すでにそこに存在している空間にどう取り組むかが、インテリアのみの設計が初めての私にとって課題だった。ここでは“光・鏡像・ 量感”を使ってすでに目の前に用意されてある空間を少しずつ歪め、そこに新しい質をつくっていくことを考えた。所々吹き抜けのある1~2 層の高さをもつ空間に直径2.4m、22 個のパラボラアンテナを、天井の高さにかかわらず、床から2.4mの高さに吊るした。このパラボラアンテナは通常は電波の受信位置となる場所に置かれた点光源からの光を受け、床にムラのない平行光を落とす。美容室という場所はさまざまなモノ、そして人で溢れている。立派なカット用の椅子、パーマ液やカラフルなロッドが並ぶワゴン、パーマ用のローラボール、キャスター椅子etc、そしてきびきびと 立ち働く、たくさんのスタッフたち。特に床から人の背丈までの範囲に集中して、モノや人が空間を占めている。モノや人のスケールを超えた大きなパラボラを一定の高さに多数ぶら下げることで、下方に片寄っていた量感が上方に移動し、空間のバランスが変化し、そこに新たな性格が与えられる。大きくフレーミングされたセット用の鏡はパラボラ照明を映し出し、入って中央正面奥の2 層の高さをもつ鏡壁は、並んだパラボラ照明とロフト部分の中庭を映し込む。鏡壁の反対側にはハーフミラーのパーティションが立ち、間に挟まった空間をさらに増幅させる。制限のある空間は光や鏡像、量感によって歪められ、新しいスケールをつくり、新しい質を生む。